会員カードの印刷代とDMの郵送代|替えると何が減り、何が増えるか

会員カードの印刷代とDMの郵送代|替えると何が減り、何が増えるか
あるお店で費用の話を伺ったとき、印象に残った答えがありました。会員カードは5,000枚単位で発注していて、使い切るのにおよそ2年。DMは費用が見合わないので、もう出していない。ここまではよくある話です。続きがありました。DMをやめてから、お客様に何かを知らせる手段そのものが無くなっていたのです。空いている日に何か打ちたいと思っても、届ける先がない。費用を減らしたつもりが、打ち手を失っていました。この記事は、いま出ている費用の出し方と、替えたときに増えるもの・減るものの話です。
1. いま出ている費用を、三つに分けて出す
印刷代、デザイン費、在庫の保管。ロット発注なので、実際には数年ぶんを先に払っています。
記入してもらう、番号を控える、レジに登録する、紛失の再発行に対応する。1件あたりは短くても、件数を掛けると無視できません。
DMの印刷、宛名の準備、封入、郵送。宛先不明で戻ってくる分もここに含まれます。
比べるときに落としやすいのが②です。カードの単価やはがきの料金は請求書に出てくるので誰でも把握していますが、受付での作業時間は請求書に出てきません。ここを入れずに「カードは1枚数十円だから安い」と結論を出すと、実態と合わなくなります。
2. カードの費用は「1枚いくら」では出ない
会員カードはロットで発注します。5,000枚、1万枚といった単位です。単価は下がりますが、そのぶん前払いになり、在庫として置いておく期間が長くなります。ここに、単価の表からは見えない費用がいくつか乗ります。
まず、刷り直しです。カードには店名、電話番号、有効期限、キャンペーンの案内などが入っています。どれか一つが変わると、残っている在庫は使えません。移転、電話番号の変更、店舗の統廃合。数年に一度は起きます。次に、再発行です。紛失や持参忘れで作り直すたびに1枚ずつ減っていきます。作り直した番号の扱いも決めておかないと、同じ方が2つの番号を持つことになります。
もう一つ、枚数の見積もりを誤りやすい点があります。カードを消費するのは、いま通われているお客様の数ではありません。これまでに発行した累計です。あるお店では、年に1回以上来られる方が3,000〜4,000人ほどなのに、発行の累計は4万枚を超えていました。10倍の開きです。カードの発注量を来店客数で見積もると、想定より早く在庫が尽きます。
3. DMの費用は、郵送代だけではない
DMも同じで、切手代だけを見ると実額から離れます。印刷、宛名データの整備、封入、投函。それから、宛先不明で戻ってくる分です。転居されたお客様の住所は、こちらからは追えません。年数が経つほど、届かない通数の割合が上がっていきます。
逆に、DMにしかない良さもあります。相手を選ばずに届くことです。1年来ていないお客様にも、スマートフォンを使わないお客様にも、同じものが物理的に届きます。この点はデジタルの手段では代わりになりません。DMを全部やめるのではなく、届ける相手を絞って残すという判断も十分あり得ます。
4. 計算の型 ─ 自店の数字を入れる
比較は単純な掛け算で出せます。1通あたりの単価は、はがき代・印刷代・作業の外注費で変わりますし、郵便の料金は改定されることもあります。他店の数字ではなく、直近の請求書から自店の実額を入れてください。
紙D M = 通数 × 年間の回数 × 1通あたりの実額
L I N E = 月額プラン × 12 + 通数の超過分
カード = ロット単価 × 枚数 ÷ 使い切る年数 + 刷り直し
※1通あたりの実額には、印刷・宛名・封入・郵送・戻り分を含めてください。
実際に出した試算を一つ挙げます。36店舗で、季節ごとに年4回、1回あたり35,000通のDMを出しているお店の想定です。1通100円として計算すると、紙のDMは年間で1,400万円。同じ相手にLINEで配信する場合を、月額プランと通数の超過分まで含めて積むと、初年度で約118万円という数字になりました。これは提案時の試算で、実績ではありません。通数・回数・単価が変われば結果も変わります。ただ、桁が一つ違うという構造は、規模の大きいお店ほど共通して出てきます。
もう一つ、出しておくと判断が早くなる数字があります。1通あたりいくらまでなら出せるか、です。1回の来店で得られる利益と、DMを見て来られる方の割合を掛ければ、1通に払える上限が出ます。仮に1回の来店の利益が2,000円で、反応が100通に1人なら、1通に払えるのは20円まで。ここが自店の実額を下回っているなら、通数を減らすか、届ける相手を絞るかの判断になります。反応率は業種と商材で大きく変わるので、他店の数字を借りずに、自店で1回でも測っておくと以降の判断が楽になります。
実際に切り替えたお店の例としては、秋田県の店舗さまの事例があります。郵送のコストを数百万円規模で削減し、紙の販促からLINEへ移行された例です。
5. 費用より見えにくいのは、効きめのほう
紙のDMには、費用とは別の弱点があります。効果が測れないことです。何通出して、何人が見て、何人が来たのか。クーポンを持参された枚数くらいしか手がかりがなく、しかも持参されなかった方が「見ていない」のか「見たけれど来なかった」のかは区別できません。宛先不明で戻ってきた分を除けば、届いたかどうかすら怪しいところがあります。
配信に替えると、少なくとも「誰に送ったか」は確実になります。何人を対象にして、何通が送られたか。届かなかった相手も記録に残ります。開封の状況やリンクがどれだけ押されたかといった数字は、LINE公式アカウントマネージャーの側で確認できます。
ただし、そこから先には壁があります。配信を見て来店したかどうかは、会計と結びつけないと分かりません。ここは紙もデジタルも同じで、来店時に会員証を提示してもらう運用が回っているかどうかで決まります。会員証を毎回出してもらえる形にしておくと、送った相手と来た人が突き合わせられるようになります。費用の比較とは別に、この一点が長い目では効いてきます。
6. 替えると「増える」もの
減る話だけを並べると判断を誤るので、増えるほうも先に書きます。
LINE公式アカウントのプラン料金と、会員証システムの月額です。刷ったら終わりの紙と違い、使わない月も出ていきます。
友だち追加と会員証の登録をご案内する一手間が、切り替えの期間だけ増えます。カードを手渡していた時間と入れ替わるので、落ち着けば元に戻ります。
スマートフォンをお使いでない方には紙を残します。全廃を前提に計画すると、どこかで詰まります。
配信できる通数には上限があります。使い切ると配信が止まるので、送る前に残りを見る習慣が要ります。
通数の考え方と、上限に当たったときに何が起きるかは配信が途中で止まる・届かないときにまとめています。導入前に、会員数と配信の頻度から必要な通数を見積もっておくと、月額の見当が付きます。
7. 減らすのと、やめるのは違う
冒頭の話に戻ります。費用を理由にDMをやめたお店で、実際に起きていたことです。
DMは高い。だから出さない。ここまでは合理的な判断に見えます。ところが出さなくなった時点で、そのお店にはお客様へ何かを届ける手段が一つも残っていませんでした。平日に空きが出たとき、天気の悪い日に人が来ないとき、思いついた企画を打ちたいとき。届ける先がないので、何もできません。費用は下がりましたが、同時に打ち手も消えていました。
ここが、費用の比較だけでは出てこない差です。紙のDMは、決めてから届くまでに1週間以上かかります。刷って、宛名を用意して、投函して、配達される。つまり「今日思いついたことを、今日打つ」ことができません。配信であれば、その日のうちに届きます。空いた枠を埋めるような使い方は、この速さがあって初めて成立します。
費用を下げるのが目的なら、DMをやめるだけでも達成できます。ただし、それは打ち手を捨てる選択でもあります。やめるのではなく置き換える、という前提で考えるほうが、結果として費用の話もまとまりやすくなります。
8. 切り替えるタイミング
いちばん無駄が出ないのは、カードの在庫が切れる時期です。次のロットを発注する前に判断できれば、前払いの費用がまるごと浮きます。逆に、刷ったばかりで在庫が数千枚ある状態なら、無理に捨てる必要はありません。
その場合は並行させます。新しく来られたお客様からデジタルの会員証にして、既存のお客様は来店のタイミングで順次切り替える。カードの在庫は、切り替えを希望されない方や、スマートフォンをお使いでない方に使っていけば、無駄になりません。一斉に切り替えようとすると現場が止まるので、来店順に置き換わっていく形が現実的です。
もう一つ、切り替え前に確認しておくことがあります。いまの会員番号をそのまま引き継げるかどうかです。番号が変わると、レジ側の記録と会員証の番号が別物になります。会員番号の決め方に、引き継ぐ場合と引き継げない場合の判断をまとめています。
よくあるご質問
Q結局、紙より安くなりますか。
通数と頻度によります。DMを年に数回、数千通以上出しているお店なら、桁が変わることが多いです。逆にDMをほとんど出していないお店では、月額が新しく増えるぶん、費用だけを見ると上がります。その場合は、費用ではなく打てる手が増えることで判断してください。
Qカードの在庫がまだ大量に残っています。
捨てる必要はありません。新規のお客様からデジタルに切り替え、在庫はスマートフォンをお使いでない方や、切り替えを希望されない方に使っていけば無駄になりません。一斉に切り替えないほうが、現場も混乱しません。
QDMは完全にやめたほうがよいですか。
やめなくて構いません。DMには、相手を選ばず物理的に届くという良さがあります。全員に出すのをやめて、届ける相手を絞って残すという形が現実的です。日常の案内をデジタルに寄せて、DMは年に1回の特別な案内だけに使う、という分け方もあります。
Q費用の比較で、いちばん見落とされるものは何ですか。
受付での作業時間です。カードの記入と受け渡し、番号の控え、紛失時の再発行。1件ごとは数分でも、年間の件数を掛けると請求書に載っている金額と同じくらいになることがあります。ここを入れずに単価だけで比べると、実態から離れます。
Q高齢のお客様が多いのですが、成り立ちますか。
全員を切り替える前提にしなければ成り立ちます。使える方から順に移していき、紙は残す。紙とデジタルの併用は高齢のお客様とLINE会員証にまとめています。切り替えの割合を最初から100パーセントで見積もらないことが大切です。
いま出ているカードの発注量とDMの通数・回数を教えていただければ、置き換えたときの年間の費用をその場で概算します。無理に切り替えをおすすめすることはありません。効果が見込めない場合は、そうお伝えします。
いまのレジ・スキャナのまま会員証が使えるかは、契約前の「無料読取テスト」でもお確かめいただけます。