LINE会員証は、来店客の何割まで届くのか|到達率の上限と、そこまでの詰め方

LINE会員証は、来店客の何割まで届くのか|到達率の上限と、そこまでの詰め方
「うちだと、何人くらい増えますか」。導入前のご相談で、よくいただく質問です。ただ、この質問に人数でお答えしても、あまり意味がありません。同じ1,000人でも、年間に来られるお客様が1,000人のお店なら全員に行き渡ったことになりますし、10万人規模のお店ならまだ1%です。同じ数字が、店によって満点にも着手直後にもなります。
ですから、割合でお答えするようにしています。この記事では、その割合が実際どこまで行くのか、上限はどこにあるのか、そして何がその差を生んでいるのかを書きます。
1. 何人ではなく「何割」で見る
割合で見るとき、分母の取り方で結論が変わります。使うべきは直近1年に1回以上来られたお客様の数です。これを年間の有効会員と呼びます。
やってはいけないのが、累計の会員数を分母にすることです。あるアミューズメント施設では、カードの発行累計が4万枚を超えていましたが、年に1回以上来られている方は3,000〜4,000人ほどでした。10倍の開きです。累計には、一度きりで来なくなった方、カードを作り直した方、退会された方がすべて含まれます。ここを分母にすると、どれだけ頑張っても率は上がりません。
まず出していただきたい数字は二つです。直近1年に来られたお客様がおよそ何人かと、そのうち何人がLINEの友だちになっているか。この二つが分かれば、いまの到達率が出ます。多くのお店で、これを出したことがない、という状態から始まります。
2. 上限はどこにあるか ─ 店から勧められる分だけ届く
次に、そもそもどこまで行けるのかです。ここが、販促用に友だちを集めるやり方と大きく違うところです。
会員証は、これまでの会員カードと同じように、お客様に登録していただくものです。ポイントが貯まる、次回使える特典があるといった内容を用意して、それを動機に入っていただく運用もあります。そこは紙のカードと変わりません。
違うのは、お店の側から勧めて、順に切り替えていけるという点です。会員証は会計のたびに使うものなので、レジでご案内する機会が来店のたびに訪れます。「会員証はLINEでお作りできます」と一言添えられる場面が、毎回あるということです。だから、案内を続けていけば来店される方の大半に行き渡ります。
販促用に友だちを集める場合は、そうはいきません。掲示物やチラシで気づいた方が自分から登録する形になるので、案内が届く相手が限られます。同じLINEでも、店から勧めていける仕組みかどうかで、届く範囲が変わります。
ですから、対象になりうるのは来店されるお客様のほぼ全員です。除かれるのは、実質的にはLINEをお使いでない方だけ。あとは、どこまで案内しきれるかという話になります。
「高齢のお客様が多いから」という懸念をいただくこともあります。世代別の利用状況は公表されていて、60代のLINE利用率は91.1%(総務省 令和7年版情報通信白書)、70代でもSNS利用が78%あり、その中でLINEが最も多いとされています(モバイル社会研究所 2026年1月)。使えない方がいないわけではありませんが、「高齢だから届かない」と考えて設計するほどの割合ではありません。
上限が高いということは、裏返せば、届いていない分の大半は客層のせいではないということです。伸びしろは運用の側にあります。
3. 手段が変わると、到達率が変わる
同じお店、同じお客様でも、何で会員を管理するかによって到達率は大きく変わります。実際に聞いてきた水準を並べます。
ある物販メーカーでは、初期費用に100万円弱をかけて自社アプリを導入したものの、日常的に使う方は1割ほどでした。入れてもらう壁が高く、入れた後も開かれません。
数年運用しているお店でも会員比率は4割ほど、うまくいっている店で8割程度と言われます。別のお店では「6割いけば良い方」という水準でした。ここは店によっていろいろなパターンがあるので、あくまで一例です。
掲示物やチラシでご案内して、気づいた方に登録していただく形です。案内が届く相手が限られるので、ここで頭打ちになります。
会計のたびに出していただく形にすると水準が変わります。来店客ベースで約8割という店があり、既に友だち率が7割ある店でも、会員証化によって9割前後まで引き上げる余地があると見ています。
差が出る理由は単純で、会員証は会計のたびに使うので、ご案内する機会も毎回あるからです。掲示物での案内は、気づいていただけるかどうかに左右されます。使う場面が日々の運用に組み込まれているかどうかが、この差になっています。
ただし、これはツールの優劣の話ではありません。アプリで成果を出しているお店もあります。会員を増やすと決めて店頭で案内を続けているお店なら、どちらの道具でも使いこなせます。上の表に「高い店で8割」という水準が出てくるのも、そういうことです。
そのうえで、それぞれに得意なところがあります。
レジと同じ会社が作っているぶん、会計や購買の履歴との連携が深く、できることも多くなりやすいところが強みです。ポイントや会計に踏み込んだ仕組みを作りたい場合は、こちらのほうが向きます。
普段使っているアプリに通知が届くので、読まれやすく、クーポンも使われやすい。できることは絞られますが、届かなければ機能は使われません。
分かれ目になるのは、お店の知名度です。誰もが知っているガソリンスタンドのチェーン、ドラッグストア、スーパーマーケットのように、生活の中で名前が出てくるお店であれば、専用アプリも入れていただけますし、入れたあとも開かれます。給油や買い物のたびに使う理由があるからです。
そうでないお店では、事情が変わります。まずインストールしていただく壁があり、越えていただいたあとも、スマートフォンの中に埋もれます。あるチェーンの経営者は「自分もいろいろなアプリを入れるが、置きっぱなしで使わなくなる」と話していました。一度入れていただいても、次に開いていただける確率は高くありません。
ですから当社では、誰もが知る規模のお店でない限り、LINEの会員証をおすすめしています。すでにお客様の手元に入っていて、毎日開かれているものの中に会員証を置くほうが、届く可能性が高いからです。アプリをすでにお使いで、うまく回っているのであれば、無理に替える必要はありません。両方を併用する形もあります。
4. 到達は三段階に分かれる
実際の数字を見ると、到達には段階があることが分かります。友だちになっていただく、会員証まで登録していただく、そして毎回使っていただく。段ごとに率が変わります。
友だちになっていただく
ある多店舗チェーンでは、年間の有効会員およそ18,000人に対してLINEの登録が約7,800人。4割強で、まだ道半ばという段階です。ここが伸びていない間は、次の段も伸びません。
会員証まで登録していただく
友だち追加で止まらずに会員証まで進むかどうかです。導入1年に満たないお店で、友だち約1,200人に対して会員証の登録が約860人。およそ7割が到達していました。
毎回使っていただく
登録して終わりでは意味がありません。会員が約2,000人のお店で、月におよそ1,700人が実際に会員証を開いていました。登録した方の大半が使い続けている状態です。
この三段を分けて見ると、どこで詰まっているかが分かります。友だちが増えないのか、友だちにはなるが会員証まで来ないのか、登録はしたが使われていないのか。打つ手はそれぞれ違います。
5. 到達率を決める、店側の四つの変数
ここが本題です。上限が高い以上、実際の到達率はお店の進め方でほぼ決まります。差が出るところは四つに絞れます。
掲示物を貼るだけでは進みません。会計の場でスタッフが一言添えるかどうかで桁が変わります。声をかける人と、かけるタイミングを決めてください。
「LINEはされていますか」と伺うと、そこで半分が止まります。会計の流れの一部として案内する形にすると、断る理由がなくなります。
紙のカードを残したままだと、切り替える理由がありません。「今後は紙の会員証を終了します」と方針を示したお店と、希望者だけに案内したお店では、進み方がまったく違います。
読み取っていただくQR、かざすだけのタグ、入力項目をなくすこと。手間が一つ増えるごとに、その場で止まる方が出ます。
いずれも仕組みの話ではなく、店頭の運び方の話です。だからこそ、同じシステムを入れても店によって結果が変わります。
6. 一巡するまでの時間は、業種で変わる
到達率は、案内した人数ではなく、来店された方に案内できた回数で上がっていきます。ですから、お客様が一巡するまでの時間がそのまま到達までの時間になります。
半年に一度しか来られない方が多い業種では、年間のお客様全員に案内し終えるのに1年かかります。月に1回前後の来店がある治療院やサロンなら数か月、週に何度も来る業態なら数週間で一巡します。自店の来店間隔から、一巡にかかる時間を先に見積もっておくと、途中で焦らずに済みます。
そして、一巡し終えたあとが本番です。既存のお客様の切り替えが終わると、以降の到達率を保つのは新しく来られた方への案内だけになります。ここが止まると、率は少しずつ下がっていきます。新規のお客様が年に何人来られるかを把握して、その方たちに毎回ご案内できているかを見てください。切り替えの期間が終わったあとに、案内をやめてしまうお店が実際にあります。
あわせて、新規登録の数は必ずどこかで頭打ちになります。切り替えるべき方が減っていくためで、これは行き渡ったという意味です。3か月ほど過ぎたら、見る数字を「今月何人が登録したか」から「今月何人が使ったか」に切り替えてください。前者はいずれ落ち着きますが、後者が伸びている限り運用は健全です。
7. 到達したあとに、見えるようになるもの
率が上がると、これまで感覚でしか分からなかったことが数字で見えるようになります。会員証が開かれた記録を曜日別に集計すれば来店の偏りが分かりますし、時間帯別に見ればお店の休憩時間がそのまま谷として現れます。人手を厚くする曜日や、店頭でのご案内を手厚くする時間帯の判断材料になります。
しばらく来ていない方の人数も見えます。あるお店では、会員証を3か月開いていない方が365人という規模で把握できました。人数が分かって初めて、掘り起こしをやる価値があるかを判断できます。
紙の販促をやめる判断も、率で決められます。年間およそ30万円をかけて春と秋に計3,000枚ほどの紙のDMを出していたお店は、会員証が行き渡ったのを確かめてから、前年の秋で郵送を終了しました。置き換えたLINEのクーポンは、春の配信で350回ほど利用されています。登録者が1,000人強なので、利用率にすると約35%でした。順番を逆にして、届く先が育つ前に紙を止めないことだけ気をつけてください。
分 母 直近1年に来た人 / 累計会員は 使わない(10倍ずれる)
上 限 ほぼ全員 / 除かれるのは LINE非利用の方 だけ
水 準 販促用LINE 2〜3割 / 会員証運用 8割前後
差の源 客層ではなく 店頭の運び方(声かけ・手順・紙の扱い・操作数)
よくあるご質問
Qうちだと何人くらい増えますか。
直近1年に来られたお客様がおよそ何人かを教えてください。その人数に対して何割まで行くか、という形でお答えします。人数だけでお答えすると、お店の規模によって意味が変わってしまうためです。
Q高齢のお客様が多いのですが、届きますか。
届かない方はいますが、設計を変えるほどの割合ではありません。60代のLINE利用率は91.1%(総務省 令和7年版情報通信白書)、70代でもSNS利用が78%でLINEが最多とされています。お使いでない方には紙を残す前提で進めれば、全体の到達率は十分に上がります。
Q登録が増えなくなってきました。失敗でしょうか。
まず到達率を確認してください。来店客の8割前後まで来ているなら、行き渡ったということです。まだ3〜4割で止まっているなら、上限ではなく運用側で止まっています。声のかけ方、紙との併存、操作の手数を見直す段階です。
Q会員証を開いた回数は、来店数と同じですか。
おおむね一致しますが、完全には一致しません。お名前や電話番号でお客様を呼び出した場合は数に入りませんし、逆にご自宅で会員証を開いた場合も記録されます。来店の代理指標としては十分ですが、レジの客数と突き合わせるとずれます。ずれること自体は異常ではありません。
Q休眠のお客様は、何か月開いていなければ休眠ですか。
自店の平均的な来店間隔の2倍あたりが目安です。「3か月開いていない=離れかけている」は月1回来る業種なら妥当ですが、来店が半年に一度という業種に当てると、ほぼ全員が休眠に分類されてしまいます。
「うちの規模だとどこまで行きますか」というご相談を承っています。年間の来店客数と、いまのLINEの友だち数を教えていただければ、到達率の現在地と、上げるために何から手をつけるかをお答えします。
店頭での案内の詰め方は店頭でLINE会員登録を増やす方法、受付での運用はLINE会員証の店頭オペレーションにまとめています。